2011年11月5日土曜日

ワイルド・ソウル


この小説は、お勧めです。
ハードボイルド小説、のジャンルになるんでしょうが、ストーリーの背景は実話に基づいています。

戦後、日本政府は、貧しい農村の人々を対象に、南米の国々への移民政策を進めた時期がありました。 「日本にいるよりも稼げる、広大な土地で成功して家族に恩返ししてみないか」
そういう甘い言葉と、日本政府が奨励しているのだから大丈夫、という気持で、数万人にも及ぶ日本人が、地球の反対側の見知らぬ国へ送られていったのです。

しかし、いざ到着してみると騙されたことに気が付きます。
ジャングルの奥深くへ連れて行かれ、用意されるはずの土地はまだ開墾されてなく、飢餓と風土病が移民たちを襲います。
それでも皆で協力して畑を耕し、作物を作りますが、雨期の嵐で全て流されたりして全滅。
日本政府の役人たちは彼らを助けようとはせず、逆にジャングルの中に棄てることでこの移民政策の失敗を隠そうとします。

と、ここまでは真実です。 
私もこの本を読むまで、そんな恐ろしい事実が存在していたことを知りませんでした。
しかし、何年か前、ドミニカ移民の裁判がニュースになっていたことを思い出しました。
ドミニカ共和国の日本人移民たちの運命はもっと悲惨だったそうです。
奴隷同然のような生活を余儀なくされていたそうです。

さて、ワイルド・ソウルの話に戻ります。

上巻ではこのような、戦後ブラジル移民の苛酷な運命を中心に話が進み、ちょっと思い気持になります。
下巻では、この移民の生き残り、当時子供だった男たちが中心になって、日本で外務省や当時の役人たちに復讐をする物語になります。
テレビ局の女子アナと移民の二世(これがスケベ)の掛け合いが、暗い雰囲気を明るくしています。

復讐というと怖いイメージですが、残酷なシーンは出てきません。
これくらいの復讐なら、あってもいいかな、と(実際やったら即逮捕ですが)思えてくる内容です。

全体的に、この小説は男性向きです。 女性は苦手かもしれません。
でも一度読むと、アマゾンのシーンなどが脳裏に焼き付いて離れなくなるでしょう。
インパクトのある小説です。

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